本来血管に投与されるべき薬剤が、注射針や輸液ラインの固定不足や患者の体動等の理由で血管外に漏出した場合、薬剤の血管外漏出(点滴漏れ)となり、薬剤によっては周囲の皮膚組織が壊死に陥るような重篤な傷害を引き起こすことがある。また、点滴漏れ時のケアに関するアンケート調査結果によると、直後に温罨法を行うとした看護師が37%、冷罨法を行うとした看護師が40%とほぼ同じ割合であった。温罨法においても、冷罨法においても痛みの軽減、循環促進、薬剤の吸収促進など、それぞれ同様の効果を期待して行っているというアンケート調査の結果も報告されており、他にヘパリン類似物質を含むローション等の薬剤を使用する場合もある。
このように薬剤の血管外漏出に起因する皮膚傷害に対しケアの目的は同じでも、相反するケアが臨床の場で実践されており、看護師が自らの経験に基づいて効果があるであろうと考えるケアを選択していると思われる。
また、薬剤の血管外漏出を発見した際の状況やケア後の観察不足とともに、看護記録への記載が不十分である現状がある。その要因として、薬剤の血管外漏出を発見するための統一した観察項目がないこと、観察した結果を記載する際の明確な基準がないこと、ケア後どの程度の期間まで継続して観察が必要であるのか明確ではないことなどが挙げられる。
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