及川正広,武田利明 : 抗がん剤漏出による皮膚傷害に関する実証的研究,日本看護研究学会雑誌,31(4)95-100.

Abstract
本研究では,抗がん剤漏出による皮膚傷害の質的変化について検索するため,実験動物(ラット)を用いた基礎的研究を実施した.使用した抗がん剤は,起壊死性抗がん剤である,マイトマイシンとエクザール?,炎症性抗がん剤に属するランダ?, 非壊死性抗がん剤に属するロイナーゼ?を選択し,肉眼的,血液学的,組織学的に検索した.その結果,マイトマイシンの皮膚傷害は,皮膚深層に傷害像が強く認められ,肉眼的に観察されにくい.さらには,傷害が持続し組織の再生も弱い.エクザール?の皮膚傷害は,表皮から皮筋組織にかけ広範囲に傷害が生じ,急速に潰瘍を形成し顕在化するが,時間の経過ともに再生像も確認できる.ランダ?とロイナーゼ?は,エクザール?やマイトマイシンに比べ皮膚傷害が弱いという知見が得られた.以上から,抗がん剤血管外漏出時には,看護師は組織内部の皮膚傷害についても把握し患者と関わる必要性が示唆された.