小山奈都子(岩手県立大学 看護学部), 石田陽子, 武田利明:岩手県立大学看護学部紀要(1344-9745)9巻 Page87-91(2007.03)本文を表示

Abstract
薬剤の血管外漏出に対する温罨法は,漏出部位の末梢血管を拡張させ薬剤の吸収を促進すること,冷罨法は末梢血管を収縮させ薬剤の限局化を図ることが目的とされている.しかし,罨法が薬剤の静脈吸収へ与える影響について,根拠となるデータの記載は少ないのが現状である.よって本研究では,罨法が漏出薬剤の静脈吸収に与える影響について検討することを目的に,基礎的実験を行った. 背部皮膚と内側伏在静脈周囲に漏出させたセルシン®とアレビアチン®の血中濃度を,漏出1時間後と2時間後に測定した.その結果,両薬剤ともに対照群と罨法群の薬剤血中濃度に変化はなかった.罨法は,皮膚血流量を変化させるとされるが,薬剤血中濃度には関与していないことが示唆された.漏出した薬剤の静脈吸収量は,罨法によって左右されず同量の薬剤が皮下組織に存在しても,炎症反応の程度に差がみられることから,罨法は組織の代謝に働きかけている可能性が示唆された.