小山奈都子,石田陽子,及川正広,熊谷真澄,小澤希美,武田利明:抗がん剤の血管に対する影響に関する基礎的研究,岩手県立大学看護学部紀要,11(1),87-93.

Abstract
乳がん治療のひとつであるFEC療法に含まれるエピルビシン塩酸塩注射液(ファルモルビシンRTU®注射液)は,副作用として静脈炎が挙げられている.これは,薬剤が投与された静脈が硬化するため,肘関節の屈曲が困難となるなど,患者にとっては耐え難い苦痛である.本研究では,その疼痛を緩和させるケアを検討するために,エピルビシン塩酸塩が血管に与える影響を明らかにすることを目的として基礎的研究を行ったので報告する. 薬液投与後,急性期の傷害を観察するために7時間群2匹,24時間群2匹の実験動物(ウサギ)用いた.また,薬液が血管に接する程度が傷害に与える影響を観察するために左耳介静脈をクリップし血流を停滞させ,右耳介静脈は対照群とした.薬液投与直後は,肉眼的観察により血管が拡張し,投与後24時間目まで継続していた.血管の拡張は,クリッピングした群に強くみられる傾向にあった.顕微鏡的観察により,血管内皮細胞への炎症性細胞の接着と血管壁の変性がみられた.